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門に油差すの忘れてた

日向子はぎぃぎぃと耳障りな音を立てる鉄の門を押し開けながら
舌打ちをした

今時こんな思い鉄の門使ってる家なんて、ないよ
あちこち錆びてる上に重たくて仕方ない
でもこの門は父さんがこの家を建てた時に付けた門
あたしが死んで、この家から運び出されるまでは
このままにしておくんだ

真っ暗な玄関で靴を脱ぎ、真っ暗な廊下を台所まで進んで
壁に付いているスイッチを押す
ステンレスの流し、食器が並んだかご、作りつけの食器棚
ガス台、ごみ箱、レースのカバーがかかったテーブル
日向子の生活が蛍光灯に照らされて浮かび上がった

ただいま
誰にともなく呟いてバッグの肩紐を椅子に引っ掛けて
冷蔵庫から冷えたビールを取り出す
今夜は父さんの椅子に座ろう
父の定位置、食器棚の前の椅子に腰を下ろして日向子は缶を開けた
プシュッ
缶が開くや否や飲み口から勢いよく飛び出してきた泡をすすってから
今日最初の一口をゆっくりと飲みこむ

今日も一日、お疲れさん
______________________________

一缶目を台所で飲んでから風呂に入って日向子は二缶目を片手に
庭に出てみた
ポーチに置かれた籐の椅子に腰を下ろして何となく庭を見渡す
どこからかジィ、ジィ、と虫の声がする
空気はまだ夏の夜特有の重さと粘っこさを残しているけれど
ふとした瞬間に肌に感じる乾いて滑らかな風は夏の終わりと
秋の訪れを告げている

何を見るでもなく、何を思うでもなく、庭のどこかで葉の裏に
しがみついている虫のように、じっと籐椅子に座っていた日向子は
ふいに庭の片隅に建つ小屋を見つめた

何か 聞こえた



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