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まだ朝もやが家々の壁の下の方を舐めるように流れている早朝
篠田は日向子の家に着いた
相変わらずぎぃぎぃと音を立てる鉄の門を押し開けて中に入ると
庭のそこここにごそっと開いた穴が目に入った

おやおや・・・
日向子さんに見つかる前に埋めないと・・・

小屋のドアの取っ手に手を伸ばしたのと同時に内側から勢いよく
ドアが開いた

どん!
うわ!
きゃっ!

ドアを両側から掴んで篠田と若い女は立ちすくむ

「ば、番子ちゃん?」
「し、篠田さん?」
ドアをしっかりと掴んでいた手の力が少し緩んでドアの後ろから
メガネを掛けた色白の顔が覗いた
「お おは おはようござい ます・・・」
「おはよう」
「早いんですね」
「あ、うん、まぁね」
この子、一体いつからここに居たんだろう
篠田は左手首に目を落として時間を確かめた
6時05分
「す すいません こんな早く」
「あぁ、うん、だいじょうぶだよ、あのね、番子ちゃん、庭の穴・・・」

番子の顔がたちまち真っ赤に上気した

「すっ!すいませんっ!のっ、のびたがっ!わたし!今すぐ・・・!」
番子はくるりと翻ると小屋の中に戻って行った
「番子ちゃん」
「はいっ!」小屋の奥のほうからくぐもった声が返って来る
「シャベルは壁に立てかけてあるよ、ペンキ棚の横あたり」
「はいっ!」
がたがた、がしゃがしゃと賑やかな音がしばらく続いて番子はシャベルを手に
外に出て来た
「静かにやろうね、日向子さん起こさないように」
「は、はい」
_____________________________________

庭の穴を全部埋め終えて、篠田と番子が主犯の「のびた」と小屋の中の
テーブルでコーヒーを囲んで一息ついたのは7時少し前のことだった
「のびた だめだよ、お前は・・・」
番子がのびたと呼ばれる柴犬の鼻をぴん、と弾くとのびたは遊んでもらってると
思ったのか嬉しそうにしっぽを振った
「ほんとに すみません」番子が頭を下げるのをいやいや、とさえぎって
篠田はコーヒーを啜った
「日向子さん、動物好きだからだいじょうぶですよ」
「あ、そのことなんですけど・・・」
「うん?」
「日向子さんには その あたしのことなんて・・・?」
「アシスタントさんに来てもらうことにしたって言ってあるよ」
「あぁ そうじゃなくて あたしの その・・・」
「知らないほうがいいと思う」
篠田のぴしゃりとした口調にのびたもぴくっと耳を上げた
「・・・そうでしょうか」
「そうだと思います」
番子はふぅっとため息をついて小屋の窓から見える日向子宅を見た
「そうでしょうか・・・」

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